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お母さんごっこ

となりのクラスにいるオレのおさななじみのことを書こうと思います。上野あゆみ、という子で、小さい頃はよく一緒に遊んでいたけれど、小学五年生になった今ではしゃべらなくなってしまいました。

オレは上野あゆみを、その頃はあゆみちゃんと呼んでいたので、ここでもあゆみちゃんと書きます。

オレが幼稚園の年中組だった頃、オレの家には弟が生まれたばかりで、お母さんは弟に付きっきりだったので、オレはよくあゆみちゃんの家に遊びに行っていました。

あゆみちゃんは一人っ子で、弟か妹が欲しいとよく言っていました。オレのお母さんが弟を乳母車に乗せて一緒に幼稚園バスを待っているときなんか、あゆみちゃんは、乳母車の中の弟を本当にうれしそうに見つめて、よく話しかけたり、自分の指を握らせてはしゃいだりしていました。あゆみちゃんはオレの弟を見るとき、目がとろんとしていました。

あゆみちゃんの家で遊んでいたとき、あゆみちゃんはお母さんごっこがしたいとオレに言ってきました。あゆみちゃんがお母さんで、オレが子どもだそうです。

ルールがよく分からないまま始まったので、取りあえずオレが「お母さん。」と呼んでみると、あゆみちゃんから「赤ちゃんはしゃべらないんだよ。」とダメ出しされました。

「赤ちゃんが泣いたら、あゆみがあやしてあげるんだよ。あと、おっぱいあげたり、おむつとかもかえてあげるんだよ。」

あゆみちゃんが仕切るので、オレは分かった、とうなずきました。

でも、赤ちゃんみたいに泣いたりするのは、ばかみたいではずかしく、オレはころんと横になったままでいました。すると、あゆみちゃんがオレをせかして、

「おなかすかないの?」

と聞いてくるのでオレが、

「おなかはすいてる。」

と正直に答えると、べちんと叩かれました。

「だから、赤ちゃんはしゃべっちゃダメなの。おなかがすいたら泣くんだよ。」

あゆみちゃんはふてくされて、部屋から出ていってしまいました。

仕方がないからオレは「あーう。」とか、泣きマネをしてみせました。するとあゆみちゃんがお母さんみたいに「あらあら。」と走って来て、オレの頭をヒザの上に乗っけて、なでてくれました。なでてもらうのは気持ちがよかったです。

それから、あゆみちゃんはワンピースをめくり上げて、

「おっぱいあげるね。」

とオレの顔におっぱいを近づけてきました。オレはそれにすいつきました。ピンク色のところだけ、他のところと比べてちょっとやわらかくて、ぽっちりしているところはこりこりでかたかったです。

面白くてちゅうちゅう吸いまくると、あゆみちゃんは「痛い。」と言うので、オレは吸う強さを加減して、その代わり、舌でいっぱいべろべろなめました。あゆみちゃんは「おいしいの?」と聞いてくるので、オレはうなずきました。

別の日に、おむつ替えもやりました。あゆみちゃんに、弟の紙おむつを持ってくるよう言われたので、お母さんに内緒であゆみちゃんの家におむつを一枚持って行きました。 でも、弟のおむつは五歳のオレには小さ過ぎて、とてもはけません。

だからその代わり、パンツをぬがせて、ふいて、またはかせることでおむつ替えということにしました。あゆみちゃんはオレのズボンもパンツも一気にぬがせて、ウェットティッシュでおしりとちんちんをていねいにふいて、それからまたパンツとズボンをはかせてくれました。

ぬがされてちんちんを見られるのははずかしいけど、あゆみちゃんにさわられるのが気持ちよかったので、オレはされるがままになっていました。ウェットティッシュがアルコール入りのやつで、ふいた後のちんちんと肛門がスースーして不思議な感じがするので、家に帰った後も自分でこっそりやりました。

ちんちんをさわられるのは気持ちのいいことなんだ、とこのときオレは初めて思いました。

あまりにもヒマなので、原稿用紙にふざけた文章を書いてみた。夏休みの作文の宿題が、『身近な人について』。題材がアバウトすぎると思う。こういうのって、親や兄弟のことについて書くのが普通なんだろうけど、書くことが思いつかない。正直に何を書いてもいいなら原稿用紙五枚なんて楽勝だけど、学校の宿題で書けることって少ない。悪口は書けないし、悪いことをしたとも書けないし、エロいことも書けないし。作文は持て余す。

上野あゆみは今となっては身近でも何でもない、はす向かいに住んでいるが、口もきかないし、目も合わせない女子。でも幼馴染ってそういうものだ。大きくなっても仲が良いままなんて、ありえない。

お母さんは弟を連れて買い物に出ていて、オレは家で一人、留守番をしている。テレビのチャンネルをがんがん替えまくる。昼のテレビはワイドショーばっかでつまらない。退屈すぎる。

オレがそうやってごろごろしていると、窓の外からサァーって雨の降るような音が聞こえてきた。窓に近付いてみると、外は土砂降りだ。オレはお母さんから電話がかかって来る前にと二階のベランダに出て、干してある洗濯物をさくっと回収した。ベランダのへりにつかまって、頭だけ外に出して、頭をしたした雨に濡らす。雨が地肌をつーっと滑っていく感じはなんとも気持ちがいい。でも、酸性雨を浴びると禿げやすくなるってクラスの奴に聞いたのを思い出して、オレは慌てて頭を引っ込めた。

下を見ていると、道の向こうから誰かが走って来るのが見えた。上野あゆみだ。カバンを背負って、雨避けのつもりなのかハンカチをおかっぱ頭に乗せているけれど、びちょびちょで、もうあんまり意味がなさそうだった。上野あゆみは、はす向かいの家の玄関のひさしに飛び込んで、カバンの中に手を突っ込んだ。しきりにカバンを漁っているけれど、鍵が見つからないのかな? 上野あゆみは鍵っ子なのに、鍵がないんじゃ家に入れない。しばらくすると上野あゆみはしょんぼりした顔でカバンを置いて、ドアのところに体育座りした。なんだかかわいそうになってきて、一応幼馴染のよしみというのもあるし、オレは声をかけてみた。

「上野あゆみ!」

大声で呼ぶと、上野あゆみはきょろきょろした。オレがベランダからぶんぶん手を振ると、こっちに気付いて、顔を上げた。

「鍵ねえのー?」

聞くと、上野あゆみはこくんと頷いた。

「じゃあ、家来いよ!」

外人みたく親指を立てて「カモン!」なジェスチャーをしながら叫ぶと、上野あゆみは「私のこと?」みたいに自分を指さして驚いた顔をするので、オレがうんうん頷くと、

「ありがとう」

と言ったのが口の動きで分かった。

「お邪魔します」

と玄関にやって来た上野あゆみに、オレはバスタオルを被せてやった。

「鍵なくしたん?」

尋ねると、

「なくしてない。塾に忘れた」

上野あゆみは答えた。リビングのドアを開けて座布団を勧めると、上野あゆみは、

「ありがとう」

と言って、ぺたんと座った。

大して仲が良いわけでもない女子と家に二人きりで、何も喋ることがないので気まずい。小さな頃はこんな気まずさを感じることなんてなかったのに。

テレビを見ている上野あゆみの横顔の輪郭を目で辿る。鼻の付け根からすうっと鼻の先まで、なだらかな山。がくんと下がって、唇。むにむにっと小さな山があって、谷のカーブにぐっと落ちて、顎の丸くて大きな山、そこから首にすとーんと落ちる。鼻の先と、唇と、顎の山を線で繋いだら、きれいな一直線になる。前にテレビで、こういう横顔の人は美人なんですよ、と言っていた。上野あゆみは美人だろうか?

「麦茶とサイダーと飲むヨーグルトだったら、どれがいい?」

聞くと、

「サイダー」

と上野あゆみは答えた。子供はサイダーが好きだ。オレはキッチンまで行って、コップに氷を入れて、サイダーを注いだ。それをお盆に乗せて、テーブルへ戻る。上野あゆみはもうテレビを見るのに飽きたのか、テーブルの上にヒジを乗せている。やばい、と思ったけれどもう遅かった。上野あゆみはオレがさっき書いた作文を広げて読んでいた。

「ばっか、勝手に読んでんじゃねえよ!」

オレは原稿用紙を上野あゆみの手から取り上げた。どうにも恥ずかしくなって、書いたやつをぐしゃぐしゃに丸めると、

「ああっ」

上野あゆみが声を上げた。

「なんだよ」

こんな恥ずかしい文章、リビングのゴミ箱に捨てるわけにもいかず、オレは紙の球を手の中で固くぎゅうぎゅうにした。

「わたしのことが書いてあった」

と上野あゆみがニコニコして言う。

「だから?」

むっとして聞き返すと、

「なんか、面白かった」

上野あゆみは意外と普通の感想を言った。

「面白くねえよ、こんなん」

「ねえ、ちんちん触られるの、気持ちがいいの?」

上野あゆみは最後に書いてあった文章を復唱するので、オレは恥ずかしくてたまらなくなった。からかうつもりか。

「もういいじゃんか。お前、書いてあったこと、絶対他の奴には言うなよ」

「言わないよ」

と上野あゆみは唇に人差し指を当てる。でも、

「ねえ、触られるの気持ちがいい?」

しつこく追及してくるので、オレはいらいらした。

「うっせーなー」

怒ってみせると、

「あのねえ、わたしも、気持ち良かったよ」

上野あゆみはわけの分からないことを言う。

「気持ち良かったって、お前にはちんこついてねえじゃん」

そう返すと、

「じゃなくて、おっぱい吸われるの」

と上野あゆみは打ち明けるみたいにちょっと小さい声で言った。上野あゆみは続ける。

「懐かしいね、お母さんごっこ」

「別に」

「でも、覚えてるでしょ?」

「まあ……」

「久し振りにしてみようよ」

「は?」

オレは胸がどきどきしてきた。オレが上野あゆみのおっぱいを吸ったり、オレのちんこを上野あゆみが触ったり、そういうことを、五年生のオレたちがしてもいいのかな? もうオレは女子のことを何も考えずに触ったりできない。おっぱいやちんこはエロいものだって、どうしても考えてしまう。オレのちんこは硬くもなるし、エロいことを考えながら自分でちんこいじったりもするわけで、それは将来セックスをするための体の準備とか、そういうものらしくて、そのうち精通ってのもあると聞くし、ああ、分からない。分からなくて頭がぐちゃぐちゃだけど、でも、上野あゆみの裸が見てみたい。おっぱい吸いたいし、ちんこをいじられたくてむずむずする。

「お母さんごっこ、しよう? 圭ちゃんが書いてるの読んだら、またしたくなったよ」

上野あゆみは首を傾げてオレのことを昔みたいに圭ちゃんと呼ぶので、オレはきゅんとした。

「うん……」

頷くと、上野あゆみはニコニコして、オレの手を引っ張った。

階段を上がって、オレの部屋のドアを開ける。部屋に友だちを呼んだことはあるけれど、女子が入ってくるのは初めてだ。幼稚園の頃は自分の部屋がなかったから、上野あゆみがこの部屋に入るのも初めて。部屋が暑いので、オレは二十八度になっているクーラーのリモコンをオンにした。

「うわあ、かっこいい机だね」

上野あゆみはオレの学習机を触って言った。机の板の部分が上に跳ね上がって、蓋が閉まるタイプのやつだ。この造りがかっこ良くて、オレは昔、お母さんが渋るのに「絶対これがいい」とごねて買ってもらったのだ。上野あゆみもオレと同じセンスらしい。褒められると気分が良いものだ。

上野あゆみは遠慮なくきょろきょろして、オレの部屋を観察している。オレはベッドに腰掛けた。

「あのさあ……、ほんとにすんの?」

嫌々、という雰囲気を出してオレは尋ねてみた。本当はもうちんこが硬くなってきて、弄りたくてたまらないのだけれど、それを悟られないように慎重な態度で接した。だって「冗談だよ、圭ちゃんってエロいね」とか言われたら、きっと立ち直れないし、学校でばらされたら終わりだ。上野あゆみはじっとしているオレの方へ寄って来て、

「ここに座ってもいい?」

と聞くので、頷くと、上野あゆみはオレの隣りに腰掛けた。

「しよっか、お母さんごっこ」

けろっとした顔で言うので、オレのちんこはぱんぱんになった。

「オレ、やっぱ子供役なの?」

「そうだよ。だってお母さんごっこだもん。わたしがお母さんやる以外にないでしょう?」

でももう、ごっこ遊びなんてやるような年じゃない。それに、上野あゆみの喋り方がなんか大人っぽくて、困る。オレの隣りで座っている姿も、ぴっちり脚を閉じてその横に手を置いて、肩をすくめるようにして笑うから、大人の女みたいだ。

上野あゆみはベッドに深く掛け直して、ショートパンツから出ている自分の太ももをぺしっと叩いた。

「圭ちゃん、ねんねだよ」

もうお母さんごっこは始まっているらしい。オレはどきどきを抑えながら、上野あゆみの太ももに頭を乗せた。腹の方へ顔を向けるのは緊張するので、外側に向いて寝た。太ももが熱くて、すべすべだ。この角度からだと産毛が生え揃っているのが見える。オレの鼻息で、それがふわんと揺れた。肌からはかすかに石鹸の匂いがした。

上野あゆみはオレの髪を撫でてくる。優しい撫で方だ。お母さんに撫でてもらうのよりも、上野あゆみの方が、遠慮がちな触り方のせいか気持ちがいい。

「圭ちゃんは頭を撫でられるの、好きなんだよね」

オレは頷いた。しばらく上野あゆみはオレの髪をゆっくりと撫で続けていてくれた。胸のどきどきは落ち着いてきた。

「圭ちゃん」

うとうとしかけていたオレを上野あゆみが呼ぶので、オレは返事をしようとしたが、いや、お母さんごっこのときは喋ったらだめなんだった、と思い直した。返事の代わりに寝返りを打って、上を向くと、上野あゆみは見下ろしてくる。

「おっぱいの時間だね」

と上野あゆみが言う。

「飲みたい?」

聞いてくるので、オレは頷いた。オレはなんだか腹の辺りがもやもやした感じになってきた。どきどきとは違う、腹のもやもやが胸の方へ時々きゅーっと上がってくる。今からおっぱいを吸うことを想像すると、オレはなんだか興奮して、唇をむぐむぐと変なふうに動かして何回も唾を飲んだ。

上野あゆみは着ているTシャツをゆっくりとまくり上げた。オレの頭をおっぱいに近づけようと、上野あゆみは膝を浮かせようとしてくれるので、オレはそれを制して、自分で顔を上げた。

上野あゆみのおっぱいが目の前にあった。ちょっと膨らんでいて、乳首はピンク色だった。柔らかいのかな? と俺は唇を付ける前に、指で乳首をつんと触ってみた。すると上野あゆみは、「あ」と言って、ちょっと丸くなった。喋ってはいけないので、オレは上野あゆみに「大丈夫?」と心配するような表情を見せると、上野あゆみはにっこりして、もう一度オレの口元まで乳首を持ってきてくれた。オレは気を取り直して、それにしゃぶりついた。上野あゆみのおっぱいは懐かしい感じがした。皮膚の薄さ、柔らかさ、乳首の小さなこりこり。ちゅっちゅっと吸うと、上野あゆみは「ん、ん」と鼻声を出す。舌をぺろぺろ素早く動かすと、これにも「ん、ん」と反応する。反対側の乳首にも同じように、ちゅっちゅっとぺろぺろをすると、上野あゆみの声はだんだん「ふぅん、ふぅん」といった感じになってきた。

「圭ちゃん……」

泣きそうな声を上野あゆみが出すので、オレはどきりとして見上げた。

「飲み方、上手になったね」

そう言って髪を撫でられたので、オレは頬っぺたがかっと熱くなった。エロい気持ちでやっていたのを指摘されたみたいで、いたたまれない。すると、上野あゆみは体を離して、Tシャツをえいっと脱いで、それを畳んでベッドの下に置いた。上半身裸の上野あゆみは、オレの二の腕を引っ張って後ろに倒れる。オレたちは二人でベッドに横になった。

「もっと飲む?」

優しい聞き方だった。オレは上野あゆみの体にしがみついて、おっぱいに顔を近づけた。

「横になると、ちょっとおっぱい大きくなるでしょ?」

と、上野あゆみは二の腕でおっぱいをむぎゅっと寄せた。確かにこうすると、大人のおっぱいみたいに大きく見える。二の腕に隠れそうになっている乳首に舌を伸ばして、つっついてみた。上野あゆみは「あん」と甘ったるい感じの声を出した。そのまま、オレはさっきと同じように舐めて吸いまくった。おっぱいの肉がさっきよりもあるので、大きく口を開けて頬張ることができた。そのままぎゅうっと吸ってもぐもぐしたり、先っちょだけ咥えてちゅくちゅく吸って舌の先でちろちろ舐めたり、色々試してみた。上野あゆみはその度に「あん」とか「ふぅん」とか鼻声を出す。オレはその声をもっと聞きたくなってしまうので、乳首を吸うのをなかなかやめられない。

続けているとだんだん自分の体が熱くなってくる。オレも着ていたTシャツを脱いで放った。すると上野あゆみが、

「そろそろおむつも替えよっか」

と尋ねてくる。とうとう来た、とオレは背中がぞくっとなった。上野あゆみにちんこを触ってもらえる。期待でオレのちんこはぱんぱんに硬くなった。

上半身はもう裸なので、下を脱がされたらすっぽんぽんになってしまう。上野あゆみは仰向けになったオレのハーフパンツをずり下ろそうとするので、オレはその手をつかんで、

「あのさ、オレだけ裸ってのもずるいじゃん。お前も……脱げば?」

そう言うと、上野あゆみは、

「そっかー」

と意外と素直に頷いて、自分のショートパンツを脱ぎ始めた。子供役のオレが喋ったのは、別にもう、いいらしい。

上野あゆみはショートパンツと靴下を脱いで、これも丁寧に畳んで、Tシャツの上に置いた。上野あゆみがパンツ一丁になったので、オレも同じようにパン一になる。

「ウェットティッシュある?」

と上野あゆみが聞いてくる。オレは隣りの部屋まで速やかに走って行って、ウェットティッシュを取ってベッドに戻った。それから、

「ごろんしてね」

と言われたとおり、オレはベッドに仰向けになった。

上野あゆみがオレのトランクスを下ろす。もうちんこはいきり立っている。それを見た上野あゆみは「わあ」と驚いたような声を上げた。

「うふふ、すごい、すごい」

そう言いながら、上野あゆみはオレの膝の裏を持ち上げて、ウェットティッシュを二枚取って、金玉の裏のところに当てた。デリケートな場所だ、というのはちゃんと分かってくれているみたいで、上野あゆみはそこをふんわりと優しく拭いてくれる。拭いた後はそんなにスースーしない。アルコールの入ってないやつか、とオレはちょっとがっかりした。

「もうちょっとお尻上げてねー」

オレは何でも上野あゆみの言うとおりにした。自分で膝を持って、尻が浮くような格好になる。すると、上野あゆみはオレの肛門を拭き始めた。思わず「あぁ……」と変な声が出てしまい、恥ずかしかった。

「お尻拭きも、気持ちいいの?」

上野あゆみは楽しそうに、オレの尻を拭く。尻の穴にウェットティッシュ越しの指がはまると、足がぴくんと震えた。そのまま指を突っ込んで欲しい、肛門ほじって欲しい、と変な気持になったけれど、さすがに、うんこの出てくる場所に指を突っ込んで欲しいとまでは言えないので、オレはもどかしく腰をもじもじさせるだけだった。

「いっぱい拭き拭きしようね。後でちんちんも拭いてあげるね」

その声に、オレはぞくぞくしながら頷いた。

丁寧に尻と金玉を拭いてもらった後、オレはまたぺたっと仰向けの体勢に戻った。上野あゆみは新しいウェットティッシュを二枚取って、

「ちんちん拭こうね」

と言う。オレはどきどきしながら上野あゆみのやり方を観察した。

根元のところから、ウェットティッシュを当てる。指で輪っかを作って、それでしごくように拭く。昔は確かこんな拭き方じゃなかったと思うけれど、オレのちんこがでかくなったから、こうするのかな?

「硬いね」

と上野あゆみはオレのちんこのことを言うので、

「うん、触ったりすると硬くなるんだ」

と説明する。女子には分かるまい。

上野あゆみはウェットティッシュでちんこを握って、強くもなく弱くもない絶妙な力加減で擦り上げてくる。気持ちいいな、と思って、目をつぶり、しばらくちんこに集中する。しかし、そうしていると、いきなりちんこの先に鋭い痛みが走った。

「痛っ!」

勝手に腰がびくんと跳ね上がった。上野あゆみもびっくりした顔で後ろに跳ねて、

「ごめん、ごめん、痛かったね」

とおろおろする。上野あゆみは、ちんこの皮を剥こうとしたんだろう。

クラスの奴の何人かが自分で剥いたとか言っていたから、オレもお風呂でやってみたことがあるけれど、痛くてなかなか全部は剥けない。放っておけば自然と剥けるのかな? それとも最低でも一回は痛い思いして無理やり剥かなきゃダメなのか?

「ひりひりするんだよなー、ちんこの皮剥くの」

「そうなの?」

「うん。大人になると、この先っちょのところが全部出るようになるんだって。でも、まだオレ、痛いわ」

「ふうん、男子はすごいね」

上野あゆみは感心したふうに呻るので、

「すごくはないと思うけど……」

ちょっと恥ずかしくなった。

「じゃあ、剥かないように、そっと拭くね」

上野あゆみは、手の動きを再開した。根元から先へ撫で上げて、逆向きへは皮を動かさない。オレは上野あゆみに言ってみる。

「あのさ、先っちょがちょっと見えるとこあんじゃん」

「うん」

「そこを、そおっと触ってみてよ」

「うん、分かった」

「あの、できれば素手で。ティッシュだと擦れて痛いんだ」

オレはこの際なので、ちんこの皮を剥いてもらおうと考えた。自分で剥く方がきっと楽に剥けるだろう、それでも、女子に剥いてもらうってのがたまらなくエロいような気がして、それに上野あゆみの触り方はすごく優しいので、気を付けてやってもらえばそんなに痛くないんじゃないか、という期待もあった。

「あと、ちんこの皮、剥けたら剥いて欲しい」

「まかせてー」

と上野あゆみはニコッと笑って、今度は素手でオレのちんこを弄り始めた。

ちんこの先は、火山の火口みたいになっている。火口に上野あゆみの人差し指がそっと入っていく。

「うあ……」

ぴと、と指の先がちんこの先に触れるだけで、痛気持ち良くて背中がじいんと痺れた。

「大丈夫?」

上野あゆみは心配そうに眉を寄せるので、

「うん、平気」

と答えた。

「ちょっと強めに握って欲しい。そんで、細かくゆっくり上下に動かして」

「うん」

オレの言ったとおりに、上野あゆみはちんこを弄ってくれる。ぐにぐにと上下にしごかれて、皮と中が別々に動く。見ると、先っちょの露出はさっきよりも多くなっていて、少しずつ剥けてきているのが分かった。一気に引き剥がすと、たぶん泣くほど痛いんだろうけど、これくらいゆっくりなら、我慢できそうな気がする。

「どう?」

上野あゆみが聞いてくるので、

「うん、痛気持ちいい。そのまま、続けて欲しい」

正直にお願いすると、上野あゆみは唇にきゅっと力を入れた。やる気まんまんって感じだ。お母さんごっこが好きだったくらいだから、上野あゆみは面倒見が良くて、お願いされたことは張り切ってやるタイプなんだろう。

「触り方、結構上手いよな」

と言うと、上野あゆみは嬉しそうにするので、オレは気持ち良くしてもらうためにどんどん褒めた。

「ああ、すっげえ気持ちいい。お前、いいよ、めっちゃいい」

「うふふ」

「はぁ……あ……ちんこ気持ちいい」

「うんうん」

でも、大げさじゃなく、本当に気持ちが良くてたまらなかった。ちんこの方は、見るともう結構剥けてきていて、上野あゆみの手の輪っかから、オレの先っちょのピンク色が出ているのが見える。

「さっきより、剥けてきたよ」

上野あゆみは言う。

「どこまで剥いたらいいの?」

しごきながら聞いてくるので、

「できたら、全部。たぶん、もうちょっと剥いたら先っちょが全部出てくると……思う。はぁっ……」

オレは変な声を出しながらも必死に答えた。だんだん痛いのよりも、気持ち良さが上回ってくる。ちんこの皮を完全に剥いたら、きっと、もっと気持ち良くなるだろう。

「上野あゆみっ」

「はいっ」

「先っちょんとこ、反対の手で弄って。ちんこしごきながら、触ってみてっ」

お願いすると、上野あゆみは先っちょにちょんと指を乗せた。それだけで、またびりびりっと背中に痺れが走った。

「あうっ……」

「痛い?」

上野あゆみは心配そうに俺の顔を覗き込む。

「ああっ、あああっ、痛くないっ、いや、痛いけどっ、でも……いいんだっ――

もう何も我慢ができなくなって、オレは自分の腰を上下に跳ねさせた。上野あゆみの優しいしごき方の上に、オレの乱暴な動きが加わって、ちんこの皮が大きく剥けるのが分かった。

「あっ、あああ、はんっ……、気持ちいっ、上野あゆみっ、もっとしごけよっ」

痛いのも気持ちいいのもいっしょくたになって、オレはむちゃくちゃに腰を振った。上野あゆみはオレの言うとおりに、大きく手を動かした。ちんこの皮がめりっと剥けて、頭のところが全部出たっぽい。ちんこの首の付け根のところがはっきり見えた。オレは足の指をくっと曲げて、ベッドに踏ん張った。

「あ、あ、あ、すげっ、いいっ……はぁっ……はぁ、ん……」

「圭ちゃん、すごい」

一人で勝手にテンションを上げているオレを見て、上野あゆみがニコニコする。オレの背中はさっきからずっと、ぞくんぞくんと痺れまくっている。自分でちんこを弄るとき、オレは最後にいつもイク。大人がイクときには、射精するらしいんだけど、オレはまだ精子が出ないので、空イキだ。それでも、めちゃくちゃ気持ちいいのは知っているので、

「上野あゆみ……、オレ、イキたい……」

お願いすると、

「うん、いいよ。いこうね圭ちゃん」

上野あゆみはイクの意味が分かっているのかいないのか、そう答えてくれた。上野あゆみはオレのちんこの真ん中らへんを握ってしごいているので、オレはその手を、もう少し先っちょに近い、首のところに指が引っかかる持ち方に変えさせた。

「これで、しごいてみて」

そう言うと、上野あゆみは頷いた。

「こうだね」

と上野あゆみは皮を上下させる。

「うああっ……あんっ……」

オレはばかみたいな声を出した。親指と人差し指の輪っかが、頭のピンク色に触れて、剥けたばかりの皮がちょっと被さる。それがたまらなくいい。お腹から背中にかけて、びりびり痺れて、まだ何も出ないって分かってるのに、ちんこから今にも精子がびゅーっと飛び出てきそうな、そんな感じがする。射精って本当に気持ちがいいんだろうなあ、とオレは想像する。

「いっ、ひぃっ、あ、うあっ」

「気持ちいいね、もっとちんちんくにゅくにゅしようね」

上野あゆみの言い方がエロくて、オレは煽られる。

「ん、んんっ……あ、あ、イク、イクぅっ」

「うん、うん、いいよ、圭ちゃんかわいいよ」

「ああああっ!」

オレはちんこをびくんびくん跳ねさせながら、それにちょっと腰も浮かせて、イキまくった。自分で弄るのとは比べ物にならないくらい気持ちが良かった。イった後は腰の辺りが熱くて、全身がぐったりした。はあはあ息をしているオレを見て上野あゆみは、

「気持ち良かったね」

とにっこりした。

だんだん落ち着いてくると、尻の辺りが汗でぐっしょりしているのも分かるし、変な格好で腰を跳ね上げたせいで、ちょっと腰が痛いのにも気付く。

ちんこを見ると、剥けたところの周りに、何やら垢みたいなのが付いていた。しごきまくったせいで、出てきたのかな? 毎日ちゃんと洗ってるのに、上野あゆみに汚い奴だと思われるかな?

「ごめん……ちんカス、すげえし……」

オレは恥ずかしくなって、手でちんこを隠した、

「大丈夫だよ。拭き拭きして、きれいにしよう」

上野あゆみはオレの手をやんわりと外して、ウェットティッシュを一枚取って、指で優しく皮を下げて、ちんカスを拭ってくれた。ちょっとひりひりして痛かったけれど、我慢した。

拭き終わった後、オレはトランクスだけ穿いて、上野あゆみもパン一のままベッドに二人で横になった。一個の枕を半分こして、タオルケットを腹に掛けた。上野あゆみがオレにぴったりくっ付いてきて、ちょっと暑いなと思ったけれど、そのままにした。

「さっきの圭ちゃんかわいかった」

と上野あゆみが言う。

「別に、かわいくねえし」

男がかわいいなんて言われても嬉しくない。どっちかっていうと、上野あゆみの方がかわいいって言われるのは嬉しいんじゃねえか?

「でも、途中からお母さんごっこじゃなくなっちゃったね」

上野あゆみはオレの指を弄りながら言う。

「そうだな」

「じゃあなにごっこ?」

「うーん……なにごっこでもないんじゃねえの?」

オレが答えると、

「えっち?」

小さな声で上野あゆみが聞くので、オレはどきっとした。なんだよ、上野あゆみだって、エロいこと考えながらしてたんじゃねえか。

「えっち……かもな」

オレはなんとなくきまりが悪くなって答えた。ただセックスっていうのは、おっぱい吸って、ちんこを手でしごくんじゃなくて、ちんこを女の股のところに入れて、射精するのが本当らしい。だからオレたちがしたことは、エロいことだけれど、セックスじゃない。

女の股。そういえば、オレは上野あゆみにちんこをしごかれまくって、イかされたというのに、オレは上野あゆみの股を見ていない。これって不公平だ。オレには上野あゆみの股を見る権利がある。

「オレ、お前にちんこ見せたじゃん。だからさ、お前もオレにパンツ脱いだの見せてよ」

そう言うと、上野あゆみは、

「えー、恥ずかしいよ」

と今更恥ずかしがった。

「オレだって恥ずかしかったんだからな」

「うーん……、じゃあいいよ」

上野あゆみはむっくり起き上がって、ベッドに膝立ちになった。

「あのね、なんで恥ずかしいかっていうとね……」

上野あゆみは俯いてごにょごにょ喋る。

「うん」

オレも体を起こして、あぐらをかいた。

「股のところが、なんか、湿ったの……圭ちゃんのちんちん触ってたら、変な感じになっちゃって、だから……漏らしたみたいで恥ずかしいよ」

「そんなん、何も恥ずかしくないじゃん。オレなんて、イクとこ見られたんだぜ?」

「うーん……」

早く見たい。でも、無理に「脱げよ」と言うと、嫌がられそうな気がしたので、オレは「北風と太陽」方式で上野あゆみが自分から脱ぐような言葉を探した。

「漏らしてたらさ、オレが拭いてやるよ。さっきお前がしてくれたみたいに、優しく拭いてやる。絶対笑わない」

と言うと上野あゆみは、

「うん、じゃあ脱ぐ」

とパンツに指を引っ掛けて、ゆっくりと下ろした。しかしその時、急に家の電話が鳴って、オレも上野あゆみもびくんと跳ね上がった。

「やべえ、お母さんかな……」

オレが上野あゆみを見上げると、上野あゆみはオレのTシャツを渡してくるので、電話に出ろということなのだろう。オレはしぶしぶ立ち上がって、Tシャツを被った。隣の部屋の子機のところまで行って、電話を取る。やっぱりお母さんだった。今からすぐに帰る、洗濯物は取り込んでおいて、電話の向こうでお母さんはそんなことを言うから、オレはちょっといらいらしながら「もう洗濯物は全部取り込みましたー」とふてくされて言った。

部屋に戻ると、上野あゆみは服を着込んでいた。オレはがっかりした。

「お母さん、もうすぐ帰ってくるって」

と上野あゆみに言うと、

「うん、そっか」

と上野あゆみはオレのハーフパンツを拾って渡してくるので、オレはだらだらとそれを穿いた。でも、

「圭ちゃん、また……しようね?」

上野あゆみが、ちょっともじもじしながらオレをうかがう。オレは嬉しくなって、

「うん、しような」

と頷いた。

すっかり元の格好に戻ったオレたちは、かっこいい机の前に椅子を二つ置いて、一緒に宿題をした。といっても、オレの宿題を上野あゆみに手伝ってもらっただけなのだけれど。肩をぴったりくっ付けて、まるで幼稚園の頃に戻ったみたいに、オレたちは仲良しだ。

それにしても、エロいことを書いても怒られないのなら、オレは上野あゆみとしたことを原稿用紙五枚でも十枚でも、百枚だって書けるのに。いや、それ以前に幼稚園の頃のお母さんごっこだって、今さっきしたことだって、誰にも言えない。オレと上野あゆみだけの秘密だ。

オレはため息をついた。作文の宿題だけは持て余す。

Aug9, 2012

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